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1月IMI Colloquium(2021/1/13)を開催しました

研究集会・セミナー


2021年 1月13日, 1月IMI Colloquiumを開催しました.
 
1月 IMI Colloquium
講演タイトル : メビウス結晶の発見とトポロジカル結晶学の構築とトポロジー理工学
講師:丹田 聡 教授 (北海道大学 工学研究院応用物理学部門、トポロジー理工学センター)
場所:Zoomによるオンライン配信
 
北海道大学の丹田聡教授による「メビウス結晶の発見とトポロジカル結晶学の構築とトポロジー理工学」というタイトルの講演が行われた。本講演は実験による新しい構造を持つ物質の発見に端を発する、物理学と数学のつながりと広がりを模索する意欲的な研究のoverviewとして展開された。
物質は様々なミクロ的構造を持つ。代表的なものは結晶であり、近年ではフラーレンやカーボンナノチューブ、グラフェンなど幾何学的にも多様な物質がある種の結晶構造の集合体として存在している。最初にこの中からリング構造を持つ結晶の例と構成についての紹介があり、さらに(NbSe3などで)ねじれを持つ結晶: 「メビウス結晶」の構成に成功した研究の紹介があった。化学的な対称性との対応により構成されるが、従来の結晶と幾何学的に大きく構造を異にするこの物質は「結晶」と呼んで良いものか、これを考察するため、「結晶」と呼ばれるべき構造が有するとされる性質であるBragg反射の考察へと話は進む。その考察において、並進対称性を有する従来の意味での結晶、準結晶などには見られないテクスチャーパターンが観察され、従来の結晶とは異なる性質を持つ結晶として「トポロジカル結晶」のカテゴリーを提唱した。ここで数学的な不変量として「絡み数 (linking number)」, 埋め込みが可能な多様体と対応させて、メビウス結晶や2つの輪からなるHopf-link結晶など、様々なトポロジカル結晶の分類が可能となる事が紹介された。
絡み数は「ヘリシティ」という不変量と関係しており、講演は(上の意味でトポロジカルなものを含めた)結晶にも定義されるヘリシティに着目し、展開される。ヘリシティそのものは流体、ゲージ場、時空などでも定義され、多種多様な巨視的、微視的現象を記述する量として出現している。この流れの中で、トポロジカル結晶でも観察される事が見出されていた電荷密度波(Charged-Density Wave, 通称CDW)に対し、ヘリシティの存在を示し、トポロジカル結晶における物性と関連する事が紹介された。
ヘリシティが素粒子から宇宙という非常に幅広いスケールで見られる起源はまだ謎であるが、何かしらの「揺らぎ」が起因しており、それが様々なスケールに共通する数学的構造をもってヘリシティや渦度などの物理的な量を定め、それが時に物性、時に流体、時に宇宙の特性を決めるとの予想を最後に展開された。その切り口として「トポロジー」を据えているのが丹田教授のアプローチであり、「トポロジー理工学」という壮大な分野の描像が示されて講演は締め括られた。

参加者数:教員14名,学生15名