九州大学マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)は2011年に誕生したアジア初の産業数学研究所で、産業の問題に取り組む中で生起する新研究領域としての数学、マス・フォア・インダストリを開拓しています。2013年には共同利用・共同研究拠点「産業数学の先進的・基礎的共同研究拠点」に認定されました。IMI設立に先立つ2010年、東京大学大学院数理科学研究科と九州大学大学院数理学研究院は、日本で実質的に初となるスタディグループを共同開催しました。以来、最初の3日間は問題の説明と議論、週末に作業して翌週の2日間で結果の取りまとめというスタイルで、IMIが中心となって共同開催してきました。今では、数学コミュニティと産業界や諸科学分野との連携活動の第一歩として、また、学生への有効性の高い産業数学教育の実践的な方法として定着するに至りました。この活動を通して、数学・数理科学と他分野をつなぐ人材が多く育つとともに、学生のキャリアパスも大きくひろがっています。これまでのスタディグループ活動へご協力いただきました関係各位にお礼を申し上げるとともに、今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
About SGW
スタディグループの原型は、産業界における数学的問題を解決すること、あるいは数学を軸にした産業界との共同研究や連携活動の種を見出し、その芽を育てることを目的に、1968年にオックスフォード大学で始まりました。現在では同様の形式により世界各国で行われています。
スタディグループでは、産業・自治体・病院などの様々な分野から問題提供者を募り、それぞれが抱える問題で数学を使えば解決に至ると期待できるものを、数学の研究者・学生に対して紹介・解説してもらい、概ね一週間の会期中、協力して解決を目指します。 提起された問題は、会期中に解けてしまうこともありますし、解決はできなかったもののその糸口が見つかり、その後、契約等を結び共同研究を推進して行くケースもしばしばあります。 もちろん、具体的な解決に結びつかないこともあります。
しかしスタディグループの大切な役割は、具体的な問題の解決のみならず、産業界と大学等の数学研究を結ぶ協働の場を提供することにあります。問題提供する企業などにとっては、大学とのコネクションを築くことで、大学の知識を活用しやすくなります。
数学研究に携わる者にとっては、実問題に接することができる貴重な体験となり、解決を目指すプロセスを異分野の方と共有することで、参加した学生やポスドクを含む若い人たちの興味・関心も広がり、キャリアパスの多様化を生むことが期待されます。