IMIについて

所長メッセージ





ご挨拶

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所所長 福本康秀
平成26年10月1日


マス・フォア・インダストリ研究所(以下IMIと称します)は、平成23年4月、大学院数理学研究院を分割改組して誕生した本学5番目の附置研究所です。純粋数学と応用数学の垣根を取り払って産業界や諸科学分野と協働するスタイルは世界にも類がなく、平成25年4月には文部科学大臣より共同利用・共同研究拠点「産業数学の先進的・基礎的共同研究拠点」の認定をうけました。IMI は大学共同利用機関法人の情報・システム研究機構・統計数理研究所と京都大学数理解析研究所に続くわが国3番目の数学系研究所です。

20世紀後半以降のコンピュータの発達は世界を一変させました。かつては無用と思われむしろそのことを誇りにさえしていた数学分野を産業技術の最前線に押し出しています。暗号など高度な情報セキュリティ技術の発達は数論や代数幾何なしにはあり得ないし、GPS によるカーナビゲーションでは、一般相対性理論が高精度の位置同定を可能にしています。リアルでスムーズなCG動画は、幾何学、表現論、可積分系などが支えています。確率微分方程式を基礎におく数理ファイナンスや金融工学はグローバル経済を動かして政治にまで影響を及ぼすようになりました。近年、ビッグデータの利用が様々な分野で進んでいますが、データの利活用には統計学や最適化理論に加えて、最近では特異点論が役立つことがわかってきました。ミクロからマクロまでの流体運動や材料物性の計算可能性の拡がりによって、解析学からトポロジーまでを巻き込んだ現象の鋭い数理モデリングが活躍しています。数学固有の厳密な理論形式・思考様式は計算機との相性が抜群なのです。

マス・フォア・インダストリ(MI)とは純粋数学・応用数学を流動性・汎用性をもつ形に融合再編しつつ産業界からの要請に応えようとすることで生まれる、未来技術の創出基盤となる数学の研究領域です。産業技術の要請による課題は、問題自体は明確なものの、数学的定式化がなされていないものも数多くあります。有用な技術は、応用を意識せず柔軟で自由な発想にもとづいて生み出された数学からもたらされることもしばしばです。IMIでは、産業界・諸科学分野と連携して、現場でのニーズの高い数学的課題の解決や技術の開発にあたるのと並行して、予見できない未来の革新技術を生み出すシーズとなるような数学の基礎研究を進めています。産業界は問題の宝庫で、産業界との交流はこの点でも数学に豊かさをもたらしてくれます。さらに、これら特色ある研究活動を教育に活かすのもIMIのミッションの一つです。技術の未来を担う広い視野と高い国際性を持ち、独創的研究を遂行できる独立した若手MI研究人材の育成を行っています。

博士課程学生の企業への3か月以上の長期インターンシップ、MIフォーラム、スタディグループなど数学と産業界の連携を推進するユニークな活動は、文部科学省21世紀COEやグローバルCOEプログラムを展開していた頃から注目されていましたが、IMI設立を契機に企業との共同研究が一挙に増え、MI研究が本格化しています。誕生間もない研究所ですが、世界のピークをなす研究分野が複数育っています。平成24年には、ペアリング暗号解読の世界記録を樹立しました。平成26年には、スーパ-―コンピュータ上でビッグデータ処理性能を計測するグラフ処理のベンチマークテストで世界1位を獲得しました。

今後は、新たなグローバル展開と社会科学分野への進出を視野においています。平成26年にLa Trobe大学(メルボルン)内にIMIオーストラリア分室を設立し、ここを核として、農業・地球環境分野に強みをもつオーストラリア・ニュージーランドの主要な産業数学研究機関との連携を進める計画です。そして、オセアニアを含み、東南アジアからハワイまでをカバーするアジア太平洋産業数学コンソーシアム(Asia-Pacific Consortium of Mathematics for Industory:APCMfI)活動を実質化させ、アジア・オセアニア地区の産業数学の研究拠点としての役割を担っていきたいと考えております。さて、公共施設や流通システムなど様々な社会システムにおいて、経済学や心理学をなど社会科学研究と数学との融合への強いニーズがありますが、日本はこの点において遅れをとっています。農業、地球環境そして社会科学と、MIの理念を拡充しながら、IMIは国際的にもユニークな研究拠点として発展を続けてまいる所存です。さらに共同利用・共同研究拠点として,関連研究者の皆様のご意見を幅広く採り入れながら、そのコミュニティとともにこれを推進するための交流の場と機会を提供いたします。ここに至るまでの関係各位のご協力に深く感謝するとともに、関係各位には、今後ますますのご支援をお願い申し上げる次第です。