九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所

マス・フォア・インダストリ研究所ニュースレター(2026年1月)

目次

季刊:「長」のつぶやき

産業数理統計研究部門長のつぶやき:統計数学とAI、それから産業 — どこに向かう?

最近、AIの進歩を前にして、統計の研究者として少し怖くなることがあります。実際、私が「感覚的に正しい」と思った理論をなんとなくAIにつぶやいたら、数分で厳密な証明ができてしまいます。

これまで私は自分なりに統計の研究を積み重ねてきたつもりでしたが、AIが登場して、自分のやってきたことは果たして価値があったのか、考え込んでしまうことがあります。たとえば、いわゆる「既存手法を少し拡張しました」というタイプの研究については、これからの価値を問い直す局面に来ているように感じています。

あまりに時代の変化が激しく、呆然としてしまいそうです。しかし、それでも前に進まなければいけません。まずはAIを勉強し、どっぷり浸かり、多くの失敗と経験を積み重ねることを恐れないことが大切なことだと思います。

しかし、それだけでは時代を追いかけているだけで、何かが足りない気がします。
どうすればいいのでしょうか?

悩んだ結果、私なりの答えは目の前にありました。「マス・フォア・インダストリ」です。
「そうだ、九州大学に着任したときの原点に戻ろう」そう思い始めたのです。

なぜ「マス・フォア・インダストリ」なのか。

それは、産業と学理が、これまで以上に近づきつつあるからです。

産業の世界には、学理とは無縁に見える要素も多くありますし、工学的な積み重ねが支えてきた部分も大きいと思います。ただ、近年の産業の発展は凄まじく、大学との距離も急速に縮まっています。産業が大学に近づき、大学も産業に近づく。そんな時代が来ているように感じます。

そうした中で私たちは何に重きを置けばいいでしょうか。私は、「現場と本気で向き合うこと」だと感じています。なぜなら、現場と向き合って初めて「専門家としての経験や勘」をどう活用できるか考えることができるようになるからです。さらに、AIによる膨大な知の集積に加えると、より強固なものになります。

これらの「現場の肌感」「統計や数学の専門家としての経験や勘」「AIによる膨大な知の集積」が三位一体となることで、誰も考えてこなかった新たな産業や学理が生まれてくるかもしれない、そんな予感がするのです。

もちろん、「現場と本気で向き合う」ことは、大変な時間と労力がかかりますし、成果もなかなか出ません。並大抵の努力ではできません。しかし、個人的には、それだけの努力を行うだけの価値があるかもしれない、と感じています。

統計部門では、産学連携のみならず、統計のチュートリアルを開催したり、国際活動を行ったりしています。これらの「現場の活動」を通じて何を感じ取り、どういう取り組みを行っていくべきか、これから時間をかけてゆっくり考えていきたいと思います。

廣瀬 慧(産業数理統計研究部門)

1月のニュース

12月11日・12日に、IMI産業数理統計チュートリアルを開催しました

共同利用・共同研究拠点イベント(1月:臨時表示)

12月8日(月)、福岡県立須恵高等学校にて出前授業が行われました

表彰

[受賞] IMI所員参画の研究が Best Student Paper Award を受賞

IMI主催・共催の1月のイベント

応用確率シンポジウム~Society 5.0 の基盤となる確率モデルの研究~

(IMIからの組織委員:白井 朋之, 吉良 知文)

PNU – Kyushu Young Researchers Workshop on Mathematics for Industry(2026/1/6(火),7(水)開催)のお知らせ

(IMIからの組織委員:重富 尚太)

IMI所員が携わる1月のイベント(IMI主催・共催以外)

理研 iTHEMS Math & Computer SG Seminar

(投稿者:富安 亮子)

講演題目:Median-based estimators for randomized quasi-Monte Carlo integration(鈴木 航介 氏、山形大)

セミナー室 359(理研 和光キャンパス 研究本館3階)または ZOOM(オンライン)
詳細はリンク先にて。

おいでMath談話会 (Catch-all Mathematical Colloquium of Japan)

1月の講演者:正井 秀俊 氏(投稿者:落合 啓之) (講演者所属:武蔵野美術大学)

講演題目:2次元、3次元双曲幾何の数値計算 (Numerical study on 2 and 3-dimensional hyperbolic geometry) / 工学部卒の数学者 (A mathematician from engineering school )

登録フォーム:forms.gle/57E2YwReCxHsbnGe9
登録締め切り:1月9日(金)17時

九州大学解析セミナー (2026年1月)

講演者:田中 智之 氏 (講演者所属:横浜国立大学)

講演題目:改良型双線形評価と一般化KdV型方程式に対する適切性への応用

九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 5階 C504室小講義室

第43回 九州における偏微分方程式研究集会

講演題目:URL中のプログラムをご覧ください。

九州大学 西新プラザ
参加登録締め切り:1月15日(木)

IMIコロキウム

[再掲] IMI Colloquium in January 2026「AI開発で活用される数学的素養 ~AI開発の現場から~」

根本 裕也 氏 (みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 技術開発推進部 AI Powerhouse)

AI開発で活用される数学的素養 ~AI開発の現場から~

臨時IMI Colloquium in January 2026「大規模並列混合整数計画ソルバによる,これまでに解けなかった問題を解くことへの挑戦」(2026/1/16(金)開催)のお知らせ

2026年 共同利用研究

応用確率シンポジウム~Society 5.0 の基盤となる確率モデルの研究~(2026/1/21(水)–23(金)開催)のお知らせ

拡散MRIの信号値空間における信号値モデルの部分多様体としての性質の検討(2026/1/7(水)開催)のお知らせ

海外からの来訪研究者

12月訪問者

Carl-Fredrik Nyberg Brodda (Korea Institute for Advanced Study(韓国))

その他のお知らせ