九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所

マス・フォア・インダストリ研究所ニュースレター(2026年11月)

目次

季刊:「長」のつぶやき

前所長のつぶやき

私は,本年9月をもってマス・フォア・インダストリ研究所(IMI)所長の2期4年間の任期を満了し、退任致しました。10月からは白井朋之教授が新たに所長の職に就き,体制を一新して活動を始めました.今後ともIMIをどうぞよろしくお願い致します。

IMIは日本で唯一,数学の社会展開をミッションとする研究機関ですので,ミッションを達成するために数学分野では例のない取組を多く行ってきました。退任の機会に、4年間(2022年10月〜2026年9月)にIMIで行われたことのうち、主要な事項をまとめてみました。

  1. 組織整備
    1. ミッション実現加速化経費・教育研究組織改革分(概算要求)
      1. 「総合知による社会変革をブーストする分野横断数理基盤形成事業」
        2022-2026(5年間),産業数理統計部門新設,54,540千円/年,教員2名
      2. 「総合知による社会変革をブーストする分野横断数理基盤形成事業」(継続拡充分)
        2023-2026(4年間),リエゾン戦略部門新設,35,840千円/年,教員2名
      3. 「産業界との協働による世界トップレベルの産業数学拠点整備:最適化・量子数理と国際展開」
        2026-2031(5年間),先端最適化・量子数理研究部門,国際連携展開部門新設,49,680千円/年,教員2名措置
    2. ミッション実現加速化経費・共通政策課題分
      産業数学の先進的・基礎的共同研究拠点,18,435千円/年,中間評価「A-」
    3. 大学改革活性化制度(九州大学)
      産業数理統計部門に助教1名措置(2022-2026)
  2. 組織的な競争的資金獲得
    1. 内閣府 研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)
      量子人材教育エコシステムの開発と試行(2025-2027),15,000千円(2025), 12,000千円(2026)
    2. JST 日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業 (NEXUS)
      1. 日本とマレーシアの最先端産業応用数学の研究協力(若手人材育成コース)2025, 2,970千円
      2. マレーシアのグリーン分野等に対する応用数学を用いたモデリングの研究協力(若手人材コース・指導者人材交流コース)2026, 10,000千円
  3. 組織的な産学連携活動
    1. 富士通意思決定数理モデリング共同研究部門
      2022.12-2026.3, 担当:神山教授(現京大),吉良准教授
    2. 共同研究推進拠点「次世代ものづくりイノベーション推進拠点」(住友電装)2025.10-2028.9,
      担当:白井教授(〜2026.9),梶原教授(2026.10〜),森山准教授(クロスアポイントメント),福本特任教授,松江教授
    3. 東芝との共同研究(2024.10〜):
      担当:山口教授(クロスアポイントメント)
    4. JST NEXUSによるマレーシアとの交流事業:NECとの連携
    5. 文部科学省「産業・科学革新人材事業」(INSIGHT)(2026.10〜2033.3)
      九州大学全体の大型プロジェクト(約500,000千円/年)のうち,安川電機・ソフトバンク,および富士通とのプロジェクトにIMIが参画予定(統括:梶原).
  4. 人事 (特定プロジェクト教員を含む)
    1. 新規採用:19名(助教9,准教授5,教授5)
    2. 昇任:5名(准教授3,教授2)
  5. 新規の特色ある取組
    1. IMIアドバイザリーボード(2025.1〜)
      グローバル企業・ベンチャー企業・地域企業・地元自治体の幹部を招聘し,IMIの運営や数学・数理科学に対する意見を運営に反映.3回開催,11月末に第3回を開催予定.
    2. 自治体と連携したアウトリーチ活動(2025〜)
      Math for the Future シリーズ(3回),中学校・高校への出前授業など(5回).福岡県と連携,数学の面白さと深さに加え,数学の社会への活用例を強調.
    3. マス・フォア・インダストリ・プラットフォーム(2024〜)
      担当:田上准教授.全国18の数学研究機関による数学連携プラットフォーム.
    4. 産業数理統計チュートリアル(2023〜)
      産業数理統計研究部門主導による,諸科学分野の若手研究者,行政,企業の実務家向けのチュートリアル.
    5. IMIオンサイト施設(2025.6〜)
      セキュリティを確保しつつ公的統計データにアクセスできる施設.EBPMなどに貢献.
    6. 量子技術への取組(2024〜)
      業界団体「量子技術による新産業創出協議会」(Q-STAR) 加入,Q-STARと連携し量子数理の入門テキストの執筆・公開(落合教授,北川准教授),オーストラリアの国家プロジェクトMathQuESTへの参画(2026〜)など.
  6. 既存の活動の抜本的強化
    1. スタディグループワークショップの運営強化
      国際基準での運営に向け,知財・データなどの扱いに関する規約の制定と公開,課題のブラッシュアップ体制の強化,報告資料の公開.
    2. 活動データ収集・報告書作成機能の強化
    3. 広報機能の強化
      ニュースレターのオンライン化,毎月発行(担当:松江教授)など.
    4. 共同利用・共同研究拠点機能の強化
      共同利用研究の実施数の増加:26件(2022)→38件(2026)
    5. オーストラリア分室の契約更新と機能強化(2022)
      Hien Duy Nguyen教授のクロスアポイントメントでの雇用と産業数理統計部門への配置,活発な共同研究(年2回ずつ,3週間滞在).
    6. IMI全体の競争的研究資金獲得
      科研費:125,176千円(2023)→ 106,131千円(2025),
      受託・共同研究:123,465千円(2023)→ 147,982千円(2025)
    7. 九州大学基金「産業数学人材育成プロジェクト」
      目標額1,200万円達成(2026.3).第2期始動(2026.4〜)
  7. 既存の取組の円滑な運営
    1. IMIコロキウム:毎月第2水曜日に開催
    2. La Trobe-Kyushu Joint Seminar on Mathematics for Industry (2015〜)
      IMIオーストラリア分室を置くLa Trobe大学との合同セミナー.80回以上開催.
    3. アジア太平洋産業数学コンソーシアム(APCMfI,2014〜)事務局の運営
    4. APCMfIの年次会合:Forum “Math-for-Industry”(FMfI) の運営支援と教員・学生派遣
      2025(ソウル・韓国)には22名を派遣.ポスター賞もスポンサー.
    5. オーストラリア・ニュージーランド応用数理学会ANZIAM年会・スタディグループMISGへの派遣:2026.2にはANZIAM7名(教員3,学生4),MISGには教員1名を派遣.
    6. 国際学術誌International Journal of Mathematics for Industry出版(World Scientific)
      編集長:梶原教授,Philip Broadbrige教授(La Trobe大学)
    7. 大学院マス・フォア・イノベーション連係学府
      システム情報科学研究院,経済学研究院と協力して運営・文部科学省卓越大学院プログラムを実施.コーディネーター:佐伯教授,数理学系長:白井教授.中間評価「S」.
  8. その他の取組
    1. 日本学術会議 未来の学術構想 学術の中長期研究戦略 採択(2023, 2026)
      グランドビジョン⑪「数学・数理科学・量子情報科学が切り拓く未来社会」
      「分野横断学術基盤としてのマス・フォア・インダストリの確立と社会基盤としての数学連携プラットフォームの構築」(2023年版No.94,2026年版No.97)
    2. 多数の企業・官庁訪問とトップセールス
      以上全ての活動を可能にするための環境構築に取り組みました.
  9. 所長や個人としての対外的な活動
    1. 国際コミュニティでの活動
      1. 第10回国際産業数理・応用数理会議(ICIAM2023)
      2. 招致委員,実行委員,組織委員
      3. 国際産業数理・応用数理評議会(International Council for Industrial and Applied Mathematics, ICIAM)理事(Officer-at-Large)(2023〜)
        各国の応用数理系の学会・組織を会員とする国際学会
      4. 国際数学者会議ICM2030招致委員(2024-2026)
        残念ながら招致には至りませんでしたが…
      5. アジア太平洋産業数学コンソーシアム(APCMfI)
        総務担当理事(2021-16),理事(2026〜).APCMfIは2026年9月に,長年の念願がかなってICIAMの会員になり,国際コミュニティに認められた組織になりました.
    2. 国内コミュニティでの活動
      1. 共同利用・共同研究拠点などの運営委員
        京都大学数理解析研究所(2025〜),明治大学先端数理科学インスティテュート(2024〜),大阪公立大学数学研究所(2020〜),統計数理研究所(2023〜).
      2. 文部科学省基礎・基盤研究課 数理科学イニシアティブサロン 委員
      3. 統計数理研究所 統計エキスパート人材育成コンソーシアム運営委員
      4. 日本学術会議 連携会員(2023.10〜2026 .9),会員(2026.10〜)
      5. 日本応用数理学会 副会長(2020.6〜2022.6),理事(2022.6〜2024.6),フェロー(2023〜)

長い「つぶやき」になってしまいましたが,これはIMIがそれだけの活動をしてきた証左であり,逆に社会がこれだけの活動を求めていたということでもあります.ただし,IMIは社会と「共に創る」数学の研究所ですから,社会とは数学研究者にとって都合がよい部分だけでなく,あまり気が進まないような部分も含め,「ちゃんと」つきあわなければならず,そのためには他の数学研究機関がやらないようなこともきちんとやらねばなりません.例えば,経済安全保障への対応は後者の最たるものでしょう.これらの活動は,リエゾン戦略部門部門長として2024年に赴任した,元内閣府内閣審議官の佐藤文一教授の構想力・実行力に負うところが大きく,数学研究者だけではとてもここまでなし得なかったと思います.それにしても,これだけのことに対して主導したり関与したりしていれば,IMIの所長職が多忙になるはずです.2024年,還暦を過ぎた頃から前所長の佐伯修教授にならって,私もフルマラソンを走り始めました.その理由の1つは,これだけのことをこなすには体力と健康の維持が必須と思ったからです.4年間,副所長時代から数えれば8年間,文字通り一心不乱に走り続けてきた気が致します.活動に協力してくださったIMI所員の皆様, 支援してくださった事務職員の皆様,特に,直接的に私の活動を支えてくださった所長秘書の笹栗聖子さん,数理・IMI秘書室の今林つぶらさんにはこの場をお借りして感謝申し上げます.

10月から,九州大学では赤司浩一総長率いる新執行部が始動しましたが,次の6年間の最大のミッションは,恐らく「準」国際卓越研究大学とも噂される「産業競争力・研究力中核大学群」への採択となると思われます.そのためには九州大学に産業界からの投資や協働を格段に増加させることがまず大前提で,その中で日本でもユニークなIMIの活動は「九州大学の独自の強み」と位置づけられ,さらなる強化が求められています.そのためには,深く幅広い数学研究と,インパクトの大きな産学共同研究を両立させて推進する必要があります.それも後者は研究者間の個別の協働だけでなく,大型の組織連携プロジェクトを企画し実施していく必要があり,またそれが社会から強く望まれているのです.社会における学術や大学のあり方が急速に変化し,その中でさまざまな改革が求められている現在ですが,そのエネルギーを取り込み,IMIは強くならなければなりません.今後の日本の国力,そして社会の繁栄は先端的な数学が社会に活用されるかどうかにかかっており,IMIはそれを先導しなければならないと私は考えています.これからは,白井新所長を中心に,IMI所員が一丸となって,この困難でやり甲斐のあるミッションに取り組んでいただけるものと思います.皆様方もこれからのIMIの活動にご支援・ご協力をどうぞよろしくお願い致します.

私自身は,10月からは九州大学総長補佐という任期2年のお役目をいただき,執行部の末端に連なることになりました.マス・フォア・インダストリを九州大学の真の強みとするために活動していきます.また,日本学術会議の会員に任命され,今後6年間,数理科学委員会に所属して活動することとなりました.日本全体でも少しずつ動き出してきた数学の社会展開を大きな潮流にするため,必要な環境整備に努めていきたく思います.九州大学の定年まであと3年半となりましたが,私に残された期間,これまでと少し違った立場から数学振興に微力を尽くします.今後ともどうぞご指導・ご鞭撻をよろしくお願い致します.

応用理論研究部門 / 国際連携展開部門、IMI 前所長
梶原 健司

研究者ピックアップ:研究・技術カタログ

IMI所員の主要研究課題を毎月3名ほどピックアップし、概要「数学の種」、1つのトピックの詳細「研究・技術カタログ」として紹介いたします。
「所員詳細ページへ」をクリックいただくと「数学の種」と簡単なリンク等の情報を、タイトルを直接クリックいただくか、「所員詳細ページへ→研究・技術カタログ」をクリックいただくと、研究・技術カタログをご覧いただけます。

11月のニュース

大学院教育改革フォーラム2026

開催場所:エルガーラホール
要参加登録:11月27日(金)17時まで
主に学生(博士後期課程)向けのイベントです。多くの方にご参加いただけましたら幸いです。

数理科学振興会共同事業在外研究奨励フェローの募集

数理科学振興会(投稿者:落合 啓之)

詳細はリンク先をご覧ください。

【写真・報告書追加】9月3日 UTM-KU合同国際シンポジウム@マレーシア工科大学 終了報告

IMI主催・共催の11月のイベント

【写真・報告書追加】9月3日 UTM-KU合同国際シンポジウム@マレーシア工科大学 終了報告

IMI所員が携わる11月のイベント(IMI主催・共催以外)

おいでMath談話会 (Catch-all Mathematical Colloquium of Japan) 11月

11月の講演者:中島 さち子 氏(投稿者:落合 啓之) (講演者所属:株式会社steAm)

(第1部) Yang–Baxter写像と確率分布の超離散化 / メビウスの花と結び目理論 / 数学とアートの狭間から / (第2部) 数学・音楽・STEAMを横断して:ジェンダーと多様性、日本と世界の課題

オンライン開催
第2部でMentimeterを用いたリアルタイムアンケート(匿名回答可)を体験することができます。

参加登録: 現在準備中

九州大学 解析セミナー 11月

髙橋 知希 氏(投稿者:武内 太貴) (講演者所属:和歌山工業高等専門学校)

TBA

RIMS共同研究(公開型)「不確実・不確定環境における決定理論の総合的展開」

(投稿者:吉良 知文)

開催地:京都大学数理解析研究所420号室(ハイブリッド)
リンク先にプログラムあり。

第 38 回 RAMP 数理最適化シンポジウム (RAMP 2026)

(投稿者:吉良 知文、セッション『OR技術活用の最前線』をオーガナイズ)

開催場所:金沢商工会議所

IMIコロキウム

IMI Colloquium in November 2026「データの可視化から自動車会社での業務までの道のり」(2026/11/11(水)開催)のお知らせ

2026年 共同利用研究

特異学習理論とその周辺 — 機械学習・数理統計・統計物理の交差点(2026/11/20)

研究代表者:林 直輝 (株式会社豊田中央研究所)

記号計算の高速化と産業課題解決への応用4(2026/11/17~2026/11/20)

研究代表者:石原 侑樹 (日本大学理工学部数学科)

Applications and Applied Perspectives of Hyperplane Arrangements(2026/11/09~2026/11/13)

研究代表者:Junyan Chu (Kyoto University, School of Science)

幾何と数値解析2026(2026/11/07~2026/11/08)

研究代表者:新居 俊作 (九州大学数理学研究院)

海外からの来訪研究者

10月訪問者 1

MOHAMAD, AHMAD QUSHAIRI, BIN (マレーシア工科大学(マレーシア))

10月訪問者 2

YING MINGSHENG (University of Technology Sydney(オーストラリア))

10月訪問者 3

MICALIZIO ENRICO (トリノ工科大学(イタリア))

10月訪問者 4

RANDALL LLEWYN JAME (Griffith University(オーストラリア))

10月訪問者 5

Jaakko NOUSIAINEN (フィンランドセンター(フィンランド))

10月訪問者 6

Nina LOIMUSALO-LIPIÄINEN (フィンランドセンター(フィンランド))

10月海外派遣

教員8名、研究員1名 (9月/10月またぎ:2名、10月/11月またぎ:3名)

人事公募

数理科学振興会共同事業在外研究奨励フェローの募集

数理科学振興会(投稿者:落合 啓之)

詳細はリンク先をご覧ください。

助教(年俸制)1名公募 (応募締切:令和8年12月17日(木)正午)

詳細はリンク先のURLをご覧ください。
適任と思われる方の推薦・応募をご検討いただけましたら幸いです。

その他のお知らせ