広報委員のつぶやき 1: AI利用のこと
今月は少し肩の力を抜いて、最近感じていることを広報委員のつぶやきとして書いてみたいと思います。しばしお付き合いを。
まず、共同利用・共同研究拠点の「2026年度の共同利用研究計画公募」が先日締切を迎えました。多くのご応募、誠にありがとうございました。
さて本題です。近年、研究の現場でもAIの活用が広がっていると感じています。私自身、昨年10月頃に「そろそろAIときちんと向き合わないといけないな」と思い至り(詳しくは2025年10月のニュースレター特集をご覧ください)、今年1月から本格的に使い始めました。
現在の主な使い道は「研究に関する調査」です。
新しい研究テーマに取り組む際には、それまでの研究動向や先行研究を丁寧に調べ、そのうえで自分の研究の独創性や優位性を示す必要があります。しかし、世界中で日々発表されている研究を人の力だけで網羅するのは、実際ほとんど不可能に近い作業です。
自分の知っている用語で検索するだけでも情報の渦に飲み込まれそうになりますが、さらに厄介なのは「自分が知らない用語で、似た議論が行われている場合」です。
知らない単語は検索できないので、そこで探索は止まってしまいます。
それでも「動向や先行研究を調べる」とは、そうした未知の領域まで含めて把握することを意味します。一体どうしろと。
(少しマニアックですが、一例を。自分の研究課題において、よく「擬斉次:quasi-homogeneous」という概念を使います。力学系分野で用いられる用語なのですが、全く同じ意味で、代数幾何学などでの文脈では「重み付き斉次:weighted homogeneous」という用語で説明されます。自分で検索を試みる場合、この言い回しを知らないと、後者を扱う研究は一切見つけられません。)
そんなとき、膨大な情報を整理し、探索の助けとなる道具として、AIの有用性を実感しています。自分では気づかなかった「似ている議論」も候補として提示してくれるので、新たな発見やつながりのきっかけになります。
実際、自分の研究分野でも「こんな研究があったのか!」と驚くことが何度もありました。
もちろん、その取捨選択は自分が最終判断をします。
一方で、「〇〇の課題で代表的な研究」と言って自分の論文ばかり拾ってくることもあり、「そんなにニッチなのか…?」と自分で突っ込みたくなる場面もあります(課題自体は非常に基礎的で、広がりのあるものだと信じているのですが)。
こうしたAIの使い方を考えているうちに、自分の研究分野の一つである
「精度保証付き数値計算 / 計算機援用証明」
と、数学研究との関係を思い出しました。
この分野では、数学の証明に数値計算を用いることの是非が長年議論されています。
その中で大切にされてきた立場の一つに、
「理論的には人間が実行可能な計算の一部を、計算機に任せている」と
いう考え方があります。人間には現実的でない膨大な計算を、計算機の性質も踏まえた形で実行し、その過程を数学的に厳密に保証するというアプローチです。
計算機の結果をそのまま受け入れるのではなく、最終的には人間が理論として理解・検証できる形に整理することが求められ、このスタンスを堅持しながら議論を進め、成果を出しています。
AIの利用についても、同じことが言えるのではないかと感じています。AIは強力な道具ですが、あくまで補助的な存在であり、最終的な理解や責任は人間が担う。この姿勢を忘れなければ、AIは非常に有用なパートナーになる、というのが現時点での私の考えです。
もっとも、AIの出力を鵜呑みにすることの危うさを感じた場面も実際にありましたが、その話はまた別の機会に。
とはいえ、やたらとこちらの意見を褒めてくれるので、つい気分が良くなってしまうのも事実です。危ない危ない・・・。
松江 要