九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所

解析的整数論とアザラシ

池田 香凜

学位:博士(数理学)(九州大学)

専門分野: 整数論,解析的整数論,確率数論

私の研究分野は,解析学を用いた整数論です.これまでに,様々な解析学の手法を用いて研究をしてきました.これまでの研究で扱った,整数論の対象はリーマンゼータ関数の拡張として定義される関数たち,ゴールドバッハ表現,分割数や楕円モジュラーj-関数など多岐にわたります.

まず,リーマンゼータ関数とは,リーマン予想という160年以上解かれていない未解決問題で有名な関数で,素数の分布に関する情報を含んでいる整数論では重要な対象です.この関数の正整数点での特殊値を一般化した多重ゼータ値,実パラメータを付け加えたフルヴィッツゼータ関数,分母に二項係数を付け加えた中央二項級数を独自に「フルヴィッツ化」させたフルヴィッツ版中央二項級数,などについて研究を行いました.これらに対し,複素関数論を用いることによって,例えばある単区間での実零点の一意性や特殊値の性質などを研究しました.また,ゴールドバッハ予想(「4以上の偶数は2つの素数の和として表せるであろう」)の定量版といえるゴールドバッハ表現に関する研究も行いました. さらに,複素関数論だけではなく,解析学の一つの分野である確率論を用いることで,自然数の分割の仕方の数を数える分割数を合同条件をつけることにより一般化した対象の漸近公式や,最も基本的な保形関数である楕円モジュラーj-関数のフーリエ係数の漸近公式の別証明を行いました.

また,整数論の研究とは独立に,数理生物学研究室にて「アザラシ類の歯形態のモデリングと形態測定学的解析」というテーマで遺伝子型と表現型空間の対応関係を明らかにし,進化のダイナミクスの理解を深めることを目指して研究を行っています.これからは,その解析過程で用いられる輪郭ベースの形態測定学に対し,特殊関数など数論を研究する中で出会う対象や手法を活用することで,より良い理論を構築することができるよう頑張りたいと思います.