九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所

社会課題解決と数理システムズアプローチ

穴井 宏和

学位:博士(情報理工学)(東京大学)

専門分野: ソーシャル数理、計算代数、数理最適化、人工知能

 近年、産業・社会における課題解決や価値創造の場面において、数理・データサイエンス・AIの活用はますますその重要性を増しています。

 私はこれまで、産業や社会が直面する多様な課題に対し、最先端の数理技術(数理モデリング、計算代数、数理最適化、システム制御理論など)と機械学習など人工知能(AI)を組み合わせ、課題解決に繋がるソリューションの研究開発に従事してきました。

 例えば、代数的制約問題を解くアルゴリズムであるグレブナ基底や限量子記号消去(Quantifier Elimination: QE)の理工学分野での有用性・可能性に着目し、アルゴリズムの効率化と実問題への適用の研究を推進しました。特に、QEは非凸・非線形性を扱えるため、数値的手法では扱いにくい問題への展開を図りました。自動車エンジン、HDDなどのものづくりにおいて求められる制御系設計問題や、アナログ回路設計、SRAM設計、電力プラント電力安定供給制御などの応用分野へ展開しました。

 社会課題の解決においては、公平で受入れやすい社会の制度や施策を実現するための数理技術に関する共同研究をIMIの富士通ソーシャル数理共同研究部門(2014年~2017年)を設置し実施しました。移住希望者の移住先マッチング(糸島市)などに取り組み、この部門での成果を基盤とし、警備計画立案など他の活動へと展開していきました。この領域の研究は今後のAIエージェント世界においても調整、交渉や最適化などの設計において重要な技術となると考えています。

 これらの研究開発と社会実装を通じ、具体的な課題解決と新たな価値創出を目指し、理論と実践を結びつけることの重要性を実感します。そのためのアプローチが数理に基づくシステムズアプローチです。

 課題解決に不可欠な数理技術の研究開発とそれら数理モデルを現実社会のニーズに繋げる具体的な道筋や、革新的なアイデアの創出に関心を持っています。

 また、計算代数アルゴリズムの研究を基に、自然言語処理との融合による数学問題の自動求解にも取り組んできました。2012年から国立情報学研究所のプロジェクト「ロボットは東大にはいれるか」の数学チームで、自然言語で記述された数学問題を解くAIを開発し、2016年東大2次模試の数学で偏差値76.2を達成しました。それから10年、現在の生成AI技術の劇的な進展を受けて、数学問題を解く能力も圧倒的なスピードで進展しています。この「AI for Math」の研究の進展が産業や社会に与えるインパクトは大きく、数学・サイエンス、さらには産業界へもたらす可能性にも深く興味を持っています。

 これまでの実社会で数理・AI活用の経験も活かし、数理と社会の橋渡しや次世代を担う人材教育にも貢献していきたいと思っています。