共同利用

物理現象の演出可能な離散モデルの構築


種別 短期共同研究
研究計画題目 物理現象の演出可能な離散モデルの構築
研究代表者 廣瀬三平(芝浦工業大学・デザイン工学部・助教)
研究実施期間 平成28年6月11日(土)~ 平成28年6月13日(月)
研究分野のキーワード コンピュータグラフィックス, 離散可積分系, 離散微分幾何, シミュレーション, 流体, 渦糸
目的と期待される成果 MEISでの梶原健司教授(九州大学)による渦糸の離散モデルの講演は、企業からの関心を生み、産業側の働きかけにより神戸大学での二日間のセミナーの開催といった発展を産んだ。このセミナーではMEISと同様にコンピュータグラフィックス(CG)や数学の研究者も参加し、物理現象の映像制作への応用の観点から様々な課題が提示され、発展性が示唆された。
物理現象のシミュレーションを映像制作に利用するには、物理的妥当性や数値的安定性だけでなく、演出可能性が産業上重要である。前述のセミナーの主題である渦糸の離散モデルは、この課題の発展に向けた重要な例という意見が参加者より挙げられた。そこで本研究計画では渦糸を中心に、より広範囲の物理現象に対する演出可能な離散モデルの構築を目的とする。
本研究計画では、この目的に関係する離散可積分系や離散微分幾何といった数学の研究者だけでなく、映像制作現場でCGを扱っている研究者と議論を行う。特に、数学にも造詣が深いStudio Phonesの桐生裕介氏を招き、物理現象を映像制作へ応用する際の問題点や期待を演出可能性の視点から紹介していただく。この視点の研究はこれまでにも試みられたが、数学的に、特に離散化まで考慮した研究はあまり無い。しかし、前述のセミナーにおける議論により発展が期待できる状況である。
具体的には流体シミュレーションとしてここ最近注目されている渦糸を用いた手法の演出可能性からはじめ、対象を広げていく。ここで離散可積分系や離散微分幾何で発展している離散モデルは、構造を保存する離散化であり、応用上も重要な役割を果たすことから、これらに注意を払いつつ議論を進める。

【第1回(6/11-6/13)当日の様子、報告】

本短期共同研究では、企業における映像制作の研究開発者、CG研究者、映像制作者、数学者、計算機科学者など多様な分野から20名の参加者があり、以下のような議論が行われた。

まず、テーマである物理シミュレーションは必ずしも実際の現場では用いられていないとの指摘が行われた。この理由の大きなものとしては、実際の現場において演出上必要な様々な試行錯誤に対して計算コストの観点から引き合わないことが挙げられる。その要因として、使用できる手法はプロダクション全体のワークフローを支えるパイプライン上の制約から決まることが多く、演出の指示によっては物理的な妥当性は問われず、多くの場合アーティストの感性や監督などの指示によって進められているということが指摘された。

これらを踏まえ、プロダクションサイドより現場における物理シミュレーションを用いない技法やその課題に関して説明があり、多様な立場の参加者を交え、集中的に討論を行った。また、映画制作などの映像制作パイプラインの仕組みなどの説明があり、そのパイプライン上の制約から来る演出上、あるいはアルゴリズム上の制限についても議論を行った。

現場の複雑なユースケースに関する説明のもと、そこで扱う対象や様々な制約を考え、最も適切な離散化やシミュレーション手法の選択のための指標の構築が望まれていることが明らかになった。また、物理シミュレーションの普及には、既存手法の数学的基盤や技術について技術者向けの包括的な解説や説明が望まれていることも判明した。例えば、手法の数学的な導出、解説、比較であり、計算機で使用する際のコストの違いである。現場で円滑に各種物理シミュレーション手法を選ぶ際には、手法の一長一短が短時間で把握できる十分な数のサンプルおよび計算コスト表の充実が欠かせないことも指摘された。

以上の議論を踏まえ、二日目には、一つの例として流体表現のためのシミュレーション手法を取り上げ、多様な立場から詳細な議論を行った。渦糸のシミュレーション手法の紹介やPIC、FLIPなどの普及しているシミュレーション手法に関して数学者からの解説があり、それらに対して演出可能性の観点から課題が抽出され、今後研究を進めていく上での知見が得られた。

最後のパネルディスカッションでは、今後のCGと数学の関係性の向上に必要なものや、今後の産業と学術機関における研究における連携のあり方について議論が行われ、
産業側からは学術研究機関への大きな期待が寄せられた。

【関連URL】
-MEIS2015
http://mcg.imi.kyushu-u.ac.jp/meis2015/

-Kobe Studio Seminar for Studies with Renderman
http://wwwmain.h.kobe-u.ac.jp/kobe_studio_seminar/talks_sr.html.en
組織委員(研究集会)
参加者(短期共同利用)
廣瀬三平(芝浦工業大学・助教)
井ノ口順一(筑波大学・教授)
太田泰広(神戸大学・教授)
梶原健司(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所・教授)
桐生裕介(Studio Phones・代表者)
藤堂英樹(東京工科大学・メディア学部)
松浦望(福岡大学・助教)